マクロ経済スライド 年金計算|物価上昇で年金の実質額はどう変わるか
ねんきん定期便の年金見込み月額を入れると、将来の名目額と、今の価格・受給開始時の価格に直した実質額を試算します。将来の名目改定率は年1.9%の仮置きで、物価上昇率は3つのシナリオから選びます。
2026年10月11日 時点の情報(令和8年度の改定:基礎年金+1.9%・厚生年金+2.0%・基礎年金の調整率▲0.2%に対応)50〜60代で年金受給が近い方・30〜40代で老後資金設計を始めたい方向け。ねんきん定期便の見込み額(月額に直したもの)を入力します。
ねんきん定期便(毎年誕生月に届く)の「老齢年金の種類と見込額」欄を参照。年額で記載されている場合は12で割ります。50歳未満の定期便は、原則としてこれまでの加入実績に応じた額で、将来の見込み額とは限りません。ねんきんネットでも確認できます。
上の月額は、この受給開始年齢で受け取る場合の額(繰上げの減額・繰下げの増額を反映した額)を入力してください。本ツールは繰上げ・繰下げの増減率を計算せず、開始年齢は「今から開始までの年数」と物価の影響年数にだけ使います。現在の年齢が開始年齢以上なら、いま受給中として今の額から計算します。
65歳時点の平均余命は男性約20年・女性約25年が目安です。長生きを見込むなら25〜30年で試算してください。
令和7年の物価変動率は3.2%でした(厚生労働省「令和8年度の年金額改定について」)。物価は総務省統計局の消費者物価指数で確認できます。
※ 将来の名目改定率は年1.9%(令和8年度の基礎年金改定率)の仮置きです。将来のマクロ経済スライド調整率や、基礎年金と厚生年金の改定差は推計していません。「今の価格」は現在の物価、「受給開始時の価格」は受給を始める年の物価を基準にした額です。実際の年金額は日本年金機構・ねんきんネットでご確認ください。
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このツールで扱わないこと
- 繰上げの減額・繰下げの増額(入力する月額に反映してください)、加給年金・振替加算など
- 将来のマクロ経済スライド調整率、基礎年金と厚生年金の改定差(名目改定率は年1.9%の仮置き)
- 老後の生活費に対する不足額と、iDeCo・NISAの推奨積立額(生活費を入力しないため算出しません)
- iDeCo・NISAの加入資格や拠出可能額、年金にかかる税金・社会保険料
30秒でわかるマクロ経済スライドの核心
マクロ経済スライドは、賃金や物価が上がる年に、年金の伸びを被保険者数の変動と平均余命の伸びに応じて抑える仕組みです。調整が行われる年は、年金の改定率が物価の伸びより小さくなるため、実質的な購買力は下がります。
| 項目 | 2026年度 | 解説 |
|---|---|---|
| 物価変動率 | +3.2% | 令和7年平均の全国消費者物価指数(総合) |
| 名目手取り賃金変動率 | +2.1% | 物価変動率が賃金変動率を上回るため、賃金変動率を用いて改定 |
| スライド調整率(基礎年金) | ▲0.2% | 被保険者総数の変動率+0.1%(令和4〜6年度の平均)+平均余命の伸び率▲0.3%(定率) |
| スライド調整率(厚生年金・報酬比例部分) | ▲0.1% | 令和7年の年金制度改正による措置 |
| 改定率 | 基礎+1.9%/厚生+2.0% | 賃金変動率2.1% − 調整率(基礎0.2%・厚生0.1%) |
| 物価に対する実質変化 | 基礎は約▲1.3% | 基礎年金の改定率1.9% − 物価変動率3.2%。購買力は低下 |
マクロ経済スライドの仕組みと計算式
マクロ経済スライドは、平成16年の年金制度改正で導入されました。年金額は物価変動率や名目手取り賃金変動率に応じて毎年度改定され、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は、名目手取り賃金変動率を用いて改定することが法律で定められています。
改定率の求め方
スライド調整率を求める
計算式:基礎年金のスライド調整率 = 公的年金被保険者総数の変動率(3年平均)+ 平均余命の伸び率(定率▲0.3%)
令和8年度:0.1% + (▲0.3%) = ▲0.2%
改定の基準になる率を決める
物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は、名目手取り賃金変動率を基準にします。基準になる率は常に高いほう、とは限りません。
令和8年度:物価3.2% > 賃金2.1% → 賃金2.1%を基準にする
改定率を求める
計算式:改定率 = 基準になる率 + スライド調整率(マイナス値)
基礎年金:2.1% + (▲0.2%) = 1.9%/厚生年金(報酬比例部分):2.1% + (▲0.1%) = 2.0%
直近2年度の比較
| 年度 | 物価変動率 | 名目手取り賃金変動率 | 調整率 | 改定率 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年度 | +2.7% | +2.3% | ▲0.4%(被保険者▲0.1%+平均余命▲0.3%) | +1.9% |
| 2026年度 | +3.2% | +2.1% | 基礎▲0.2%(被保険者+0.1%+平均余命▲0.3%)/厚生▲0.1% | 基礎+1.9%/厚生+2.0% |
※ 被保険者総数の変動率は、2025年度は令和3〜5年度の平均、2026年度は令和4〜6年度の平均です。2026年度は被保険者総数の変動率がプラスに転じたため、調整率が▲0.4%から▲0.2%に小さくなりました。マクロ経済スライドは平成27年度・令和元年度・令和2年度・令和5年度・令和6年度・令和7年度・令和8年度の計7回発動しています(厚生労働省)。2023年度以前の年度別の改定率は、本ページでは一次資料の確認が取れた範囲に絞って掲載していません。
厚生労働省「令和7年度の年金額改定について」(2025年度の数字) 日本年金機構「スライド調整率」(用語の定義)キャリーオーバーと賃金・物価の関係
2018年4月から、名目下限措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で前年度までの未調整分を調整する仕組み(キャリーオーバー)が導入されています。また、賃金水準の変動が物価水準の変動を下回る場合は、新規裁定年金・既裁定年金ともに賃金水準に合わせて改定する考え方が2021年度から適用されています(厚生労働省)。
厚生労働省「年金額改定の仕組み」物価が上がると、年金の実質額はどう変わるか(参考計算)
将来の名目改定率を年1.9%(令和8年度の基礎年金改定率の仮置き)、物価上昇率を年2%とした場合の、月20.0万円の年金の購買力の変化です。受給開始時(65歳とした例)の月額を20.0万円とし、「実質額」は受給開始時の価格に直した額です。
| 受給からの年数 | 名目額(月・万円) | 実質額(月・万円) | 開始時からの低下 |
|---|---|---|---|
| 受給開始時 | 20.0万 | 20.0万 | — |
| 5年後(70歳) | 22.0万 | 19.9万 | ▲0.5% |
| 10年後(75歳) | 24.1万 | 19.8万 | ▲1.0% |
| 15年後(80歳) | 26.5万 | 19.7万 | ▲1.5% |
| 20年後(85歳) | 29.1万 | 19.6万 | ▲1.9% |
ポイント:名目額は20年で29.1万円に増えても、受給開始時の価格に直すと約19.6万円で、購買力は開始時の約98.1%です。物価上昇率が名目改定率を上回る差だけ、毎年少しずつ実質額が下がります。ただし将来のマクロ経済スライド調整率は推計しておらず、実際の改定率は物価・賃金の動きで年度ごとに決まります。また、現在45歳の方が20年後に受け取る20.0万円(今の価格)の年金は、受給開始時の名目額が約29.1万円になり、今の価格に直すと約19.6万円です(物価2%・本ツールの初期条件)。
年金を補う3つの方法:iDeCo・NISA・繰下げ受給
実質目減りへの備えとして、iDeCo・NISA・繰下げ受給があります。本ツールは、これらで補うべき金額(不足額・推奨積立額)は算出しません。
方法1:iDeCo(個人型確定拠出年金)で節税しながら積立
iDeCoは掛金が全額所得控除になる税優遇制度です。企業年金なしの会社員の上限は月2.3万円。2026年12月分の掛金から月6.2万円に引き上げ予定。下の表は2026年11月分の掛金までの上限です。
| 職業 | 月額上限(〜2026年11月分の掛金) | 年額上限(2026年分の控除) |
|---|---|---|
| 会社員(企業年金なし) | 月2.3万円 | 年27.6万円 |
| 自営業・フリーランス | 月6.8万円 | 年81.6万円 |
| 公務員 | 月2.0万円 | 年24万円 |
iDeCoの拠出限度額は2026年12月1日施行(2027年1月引落分から適用)で大幅に引き上げられる予定です。加入区分や、企業年金・国民年金基金などとの合算枠で実際の拠出可能額は変わるため、推奨額は制度の拠出可能額ではありません。
iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCoをはじめるまでの4つのステップ」拠出限度額方法2:新NISAで長期積立
新NISA(2024年1月〜)の年間投資上限額は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円です。非課税保有限度額は1,800万円で、うち成長投資枠は1,200万円までです(国税庁「NISA制度の概要」)。月ごとの法定上限があるわけではなく、毎月均等に積み立てる場合の配分例が、つみたて投資枠で月10万円・成長投資枠で月20万円です。iDeCoと異なり60歳前でも途中引き出しができます。
国税庁 タックスアンサー No.1535 非課税上場株式等管理契約に係る課税方法3:繰下げ受給で名目額を増やす
繰下げの増額率は、0.7%×(65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数)で、最大84%です。65歳から70歳まで繰り下げると+42%、75歳まで繰り下げると+84%です。ただし待機中も基準となる年金額は年度ごとに改定されるため、繰下げはマクロ経済スライドによる調整を避ける制度ではありません。75歳までの繰下げは、昭和27年4月2日以後生まれ(昭和27年4月1日以前生まれの方などは上限70歳)の方が対象です。繰上げの減額率は1月あたり0.4%(昭和37年4月1日以前生まれの方は0.5%)です。
| 受給開始年齢 | 名目増額率 | 月額の目安(65歳で20.0万円の場合) |
|---|---|---|
| 65歳(基本) | ±0% | 月20.0万円 |
| 70歳(繰下げ) | +42% | 月28.4万円 |
| 75歳(最大繰下げ・対象生年月日の方) | +84% | 月36.8万円 |
よくある質問
マクロ経済スライドとは何ですか?
結論:公的年金被保険者数の変動と平均余命の伸びに基づいてスライド調整率を設定し、その分を、賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除する仕組みです。平成16年の年金制度改正で導入されました(厚生労働省「令和8年度の年金額改定について」)。
2026年度のスライド調整率と改定率はいくらですか?
結論:令和8年度(2026年度)は、名目手取り賃金変動率2.1%を用いて改定します。マクロ経済スライドによる調整は国民年金(基礎年金)が▲0.2%、厚生年金(報酬比例部分)が▲0.1%で、改定率は基礎年金が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%です。基礎年金の調整率▲0.2%は、公的年金被保険者総数の変動率0.1%(令和4〜6年度の平均)と平均余命の伸び率▲0.3%(定率)の合計です。厚生年金の▲0.1%は令和7年の年金制度改正による措置です。老齢基礎年金の満額(昭和31年4月2日以後生まれの方・1人分)は月額70,608円、昭和31年4月1日以前生まれの方は月額70,408円です(厚生労働省)。
マクロ経済スライドで年金は実質どれだけ減りますか?
結論:将来の名目改定率が年1.9%、物価上昇率が年2%で続くと仮定した参考計算では、受給開始から20年後の購買力は、開始時の約98.1%です(月20.0万円なら、開始時の価格に直して約19.6万円)。この計算は将来のマクロ経済スライド調整率や基礎年金と厚生年金の改定差を推計していません。実際の改定率は物価・賃金の動きで年度ごとに決まります。
スライド調整率はなぜ毎年変わるのですか?
結論:基礎年金の調整率は、公的年金全体の被保険者数の変動率(3年平均)に、平均余命の伸びを勘案した一定率(定率▲0.3%)を加えた率だからです(日本年金機構「スライド調整率」)。被保険者数の変動率が年度ごとに変わるため、調整率も変わります。令和8年度は被保険者総数の変動率が+0.1%(令和4〜6年度の平均)で、調整率は▲0.2%でした。
デフレ時はマクロ経済スライドは適用されますか?
結論:賃金・物価が下がる年は調整されず、名目下限措置が維持されます。2018年4月から、名目下限措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で前年度までの未調整分を調整する仕組み(キャリーオーバー)が導入されています(厚生労働省)。
iDeCoやNISAで年金不足を補うにはいくら必要ですか?
結論:本ツールは不足額や推奨積立額を算出しません。必要な額は、老後の生活費や他の収入をふまえて決まります。参考として、月5,000円を30年・年3%・月末積立で運用した場合の積立額は約2,913,684円です(約291万円)。iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象ですが、節税額は掛金と課税所得で変わります。
年金の名目額は増えているのになぜ実質価値が下がるのですか?
結論:年金の改定率が物価上昇率を下回る年は、名目額が増えても購買力が下がるためです。たとえば物価が3%上昇し、年金の改定率が1.9%の年は、購買力が約1.1%低下します。この差が毎年積み重なると、実質価値が目減りします。
スライド調整はいつ終わりますか?
結論:終了時期は法令で固定されていません。2024年財政検証の「成長型経済移行・継続ケース」では、基礎年金は2037年度まで調整が続く見通しとされています(厚生労働省)。令和7年の年金制度改正で、厚生年金(報酬比例部分)のマクロ経済スライド調整は次期財政検証翌年度(令和12年度予定)まで継続され、その間の調整率は1/3に緩和されます(令和8年度の年金額改定の資料)。
所得代替率50%とはどういう意味ですか?
結論:所得代替率は、現役世代の手取り収入に対する年金額の割合です。50%は、夫が平均賃金で40年間働いた会社員、妻が40年間第3号被保険者というモデル世帯について、給付水準の下限として定められているものです(厚生労働省「公的年金の仕組み」)。個人の年金額が現役時の賃金の50%になることの保証ではありません。
受給開始を繰下げてもマクロ経済スライドの影響を避けられますか?
結論:避けられません。待機中も基準となる年金額は年度ごとに改定され、繰下げは調整を回避する制度ではありません。繰下げの増額率は「0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数」で、最大84%です。原則75歳まで繰り下げられますが、昭和27年4月1日以前生まれの方などは上限が70歳です(日本年金機構)。本ツールは増額・減額を計算しないため、繰下げ・繰上げ後の月額を入力してください。
マクロ経済スライドと物価スライドの違いは何ですか?
結論:物価スライドは物価変動率に応じて年金額を改定する仕組みです。マクロ経済スライドは、賃金・物価の改定率から、被保険者数の変動と平均余命の伸びに基づくスライド調整率を控除する仕組みで、調整が行われる年は年金の伸びが物価の伸びより小さくなります。
ねんきん定期便の「年金見込み額」はどの欄を見ればよいですか?
結論:ねんきん定期便の「老齢年金の種類と見込額」欄を参照してください。年額で記載されている場合は12で割って月額を入力します。50歳未満の方の定期便は、原則としてこれまでの加入実績に応じた額で、将来の受給見込み額とは限りません。将来の見込みはねんきんネットで確認できます(日本年金機構)。
本ツールの計算式を教えてください
結論:(1) 受給開始時の名目額=入力した月額 ×(1+1.9%)^(受給開始までの年数)。(2) 受給t年後の名目額=受給開始時の名目額 ×(1+1.9%)^t。(3) 今の価格に直した額=名目額 ÷(1+物価上昇率)^(現在からの年数)。(4) 受給開始時の価格に直した額=名目額 ÷(1+物価上昇率)^t。将来の名目改定率は年1.9%の仮置きで、将来のマクロ経済スライド調整率は推計していません。
厚生労働省「公的年金の仕組み」(モデル世帯・所得代替率50%) 厚生労働省「2024年財政検証」(基礎年金の調整終了時期)
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iDeCoなど確定拠出年金の老齢給付金の一時金(DC一時金)を先に受け取り、あとで退職手当等を受け取る場合、前年以前9年内(受取年の差が9年以下)に令和8年(2026年)1月1日以後に支払を受けたDC一時金があるときは、同じく令和8年1月1日以後に前年以前9年内で受け取った退職手当等との勤続期間の重なりが、控除の調整の対象になります(所得税法施行令70条1項2号ロ)。令和8年より前に受け取った一時金は、従来どおり前年以前4年内です。退職手当等を先に受け取り、あとでDC一時金を受け取る場合は、前年以前19年内(受取年の差が19年以下)の調整が従来どおり適用されます(同号ハ)。控除が実際に減るかどうかは、勤続期間とDC加入期間が重なっているかで決まります。「退職所得の受給に関する申告書」のC欄にも「令和8年1月1日以後、かつ、前年以前9年内に確定拠出年金法に基づく一時金の支払を受けた場合」の記載があります(この申告書の記載は未再確認)。 国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収 国税庁 退職所得の受給に関する申告書(C欄の記載)
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