相続財産評価の計算式
相続財産の評価は財産の種類ごとに異なる方法が定められています。本ツールは主要財産の概算評価額を計算します。
// 不動産(土地)の評価(路線価方式・概算) 土地評価額 = 路線価(万円/㎡)× 地積(㎡) ※ 実際には奥行補正・形状補正・利用区分等の補正率あり // 生命保険金の非課税枠(国税庁No.4114) 非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数 課税対象の保険金 = 受取保険金 − 非課税枠(0以下は0) // 相続財産総評価額(概算) 総評価額 = 土地評価額 + 預貯金 + 株式等 + 受取保険金 + その他 // 課税財産額(非課税控除後) 課税財産 = 土地評価額 + 預貯金 + 株式等 + 課税保険金 + その他 // 基礎控除(国税庁No.4152) 基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 // 課税遺産総額 課税遺産 = 課税財産 − 基礎控除(0以下なら相続税なし) // 概算相続税(速算表) 概算相続税 = 課税遺産 × 税率 − 控除額(速算表参照)
財産の種類別・評価方法まとめ
相続財産の種類によって評価方法が異なります。以下の表を参考に、各財産の評価方法を確認してください。
| 財産の種類 | 評価方法 | 備考・ポイント |
|---|---|---|
| 土地(路線価地域) | 路線価×地積×補正率 | 小規模宅地特例で最大80%減 |
| 土地(倍率地域) | 固定資産税評価額×評価倍率 | 農村部・郊外など路線価なし地域 |
| 建物 | 固定資産税評価額 | 市区町村の課税明細書で確認 |
| 預貯金 | 相続開始日の残高+既経過利子 | 金融機関で残高証明書を取得 |
| 上場株式 | 4つの終値のうち最低額 | 証券会社の残高証明書で確認 |
| 投資信託 | 相続開始日の基準価額 | 証券会社・運用会社に確認 |
| 生命保険金 | 受取額−非課税枠(500万×相続人数) | 相続人が受取人の場合のみ非課税枠適用 |
| 非上場株式 | 純資産価額方式・類似業種比準方式等 | 計算複雑のため税理士相談必須 |
路線価方式と倍率方式の違い
土地の評価方法は地域によって異なります。自分の土地がどちらに該当するかは、国税庁の路線価図で確認できます。
- 対象: 路線価が設定された地域(主に市街地)
- 計算式: 路線価×地積×補正率
- 路線価単位: 千円/㎡(「300」=30万円/㎡)
- 確認先: 国税庁 路線価図(rosenka.nta.go.jp)
- 対象: 路線価のない地域(農村部・郊外等)
- 計算式: 固定資産税評価額×評価倍率
- 評価倍率: 国税庁「評価倍率表」で確認
- 確認先: 同じく路線価図サイト
小規模宅地等の特例(最大評価額を80%減額)
小規模宅地等の特例は、相続税の負担を大幅に軽減できる重要な制度です。自宅の土地が対象になる場合、評価額が最大80%減額されます。本ツールはこの特例を反映していないため、適用できる場合は実際の税額がツールの計算より大幅に低くなります。
| 宅地等の種類 | 限度面積 | 減額割合 | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等(自宅) | 330㎡ | 80%減 | 同居親族または家なき子が相続・申告 |
| 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80%減 | 被相続人の事業を引き継いで申告 |
| 貸付事業用宅地等(賃貸) | 200㎡ | 50%減 | 賃貸アパート・駐車場等の事業継続 |
※ 国税庁No.4124(2026-05-27確認)。適用要件は複雑で個別事情により異なります。必ず税理士にご確認ください。
路線価30万円/㎡ × 330㎡(自宅) = 評価額 9,900万円 → 特例適用後 1,980万円(80%減)
特例を適用しない場合の相続税試算との差額は大きく、申告は必須です。
上場株式の評価方法(4つの終値から最低額)
上場株式の相続税評価額は、次の4つの金額のうち最も低い金額を使います。これは被相続人の死亡時の株価変動リスクを考慮した制度です。
- 相続開始日(亡くなった日)の終値
- 相続開始日の属する月の終値の月平均
- 相続開始日の前月の終値の月平均
- 相続開始日の前々月の終値の月平均
証券会社に「相続税評価額証明」または「残高証明書」の発行を依頼すると、評価額が記載されています。非上場株式は純資産価額方式や類似業種比準方式で評価しますが、計算が複雑なため税理士への依頼をおすすめします。
生命保険金の評価と非課税枠の活用
被相続人が契約者・被保険者で、相続人が受取人となっている死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象になります。ただし「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。
- 非課税枠 = 500万円 × 3人 = 1,500万円
- 死亡保険金 2,000万円 → 課税対象 = 2,000万円 − 1,500万円 = 500万円
- 死亡保険金 1,000万円 → 課税対象 = 0円(非課税枠内)
※ 法定相続人の数は相続放棄した人がいても放棄がなかったとした場合の人数を使います(国税庁No.4114)。
債務控除と葬儀費用の差し引き
相続税の計算では、被相続人が残した債務と葬儀費用を相続財産から差し引くことができます(債務控除)。
| 控除できる項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 借入金・ローン残高 | 銀行借入・住宅ローン残高等 | 団体信用生命保険で完済済みの場合は控除不可 |
| 未払い税金 | 未払い所得税・住民税・固定資産税等 | 相続開始日時点で確定している税金のみ |
| 未払い医療費 | 入院費・治療費等の未払い分 | 相続開始後に支払ったものも対象 |
| 葬儀費用 | 通夜・告別式・火葬費用等 | 香典返し・初七日以降の法要費用は不可 |
本ツールの「その他の財産」欄には、上記の控除を差し引いた後の純資産額を入力してください。
配偶者の税額軽減と二次相続の関係
配偶者が相続した場合、「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い方まで相続税がかかりません。これを配偶者の税額軽減(配偶者控除)といいます。
- 一次相続(配偶者が相続): 配偶者控除で税額ゼロになるケースが多い
- 二次相続(配偶者が亡くなった後の子への相続): 配偶者控除が使えない分、一次相続より課税額が増える可能性がある
- 対策の視点: 一次・二次合算の総税額が最小になる分割方法を検討することが重要
二次相続まで踏まえた節税戦略は個別事情が複雑です。相続専門の税理士にご相談ください。
財産評価基本通達と時価評価の原則
相続税の財産評価は、原則として「財産評価基本通達」(国税庁)に従います。路線価方式・倍率方式・純資産価額方式など、財産の種類ごとに評価方法が定められています。
- 時価評価の原則: 財産は相続開始時点の「時価」で評価することが基本(相続税法第22条)
- 通達との関係: 通達は時価評価の具体的な計算方法を示したもの。著しく不適当な場合は時価評価が優先される
- タワーマンション評価見直し(2024年1月〜): 時価と通達評価額の乖離が大きかったタワマンは、評価方法が改正されました(国税庁2023年通達)
使い方(3ステップ)
- 財産の種類ごとに金額を入力:不動産(路線価と面積)・預貯金・株式等・生命保険金・その他をそれぞれ入力します。不明な項目は0のままで構いません。
- 法定相続人数を入力:基礎控除と生命保険非課税枠の計算に使います。相続放棄した人がいても人数に含めます。
- 概算相続税を確認:相続財産総額・課税財産額・基礎控除との差額・概算相続税が即時表示されます。
よくある質問
不動産の相続税評価額はどう計算しますか?
結論:路線価(円/㎡)× 地積(㎡)× 補正率で計算します(路線価方式)。路線価は国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。建物は固定資産税評価額がそのまま評価額になります。本ツールは路線価×地積の概算値を計算しており、奥行補正・形状補正等は未反映です。(国税庁No.4602 2026-05-27確認)
路線価はどこで調べられますか?読み方のポイントは?
結論:国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」(rosenka.nta.go.jp)で調べられます。路線価図の数字は「千円/㎡」単位です。例えば「300」と表示されている場合は1㎡あたり30万円(300千円)です。本ツールは「万円/㎡」で入力するため、「300」と記載されている場合は「30」と入力してください。令和8年分(2026年分)の路線価は2026年7月1日公開予定です。
小規模宅地等の特例はどんな場合に使えますか?
結論:一定の要件を満たす土地の相続税評価額を減額できる制度です。特定居住用宅地等(自宅)は330㎡まで80%減額、特定事業用宅地等は400㎡まで80%減額、貸付事業用宅地等は200㎡まで50%減額されます。適用には相続税の申告が必要です。要件が複雑なため必ず税理士に確認してください。(国税庁No.4124 2026-05-27確認)
生命保険金の非課税枠はいくらですか?
結論:「500万円 × 法定相続人の数」です。相続人が3人の場合は1,500万円まで非課税です。この枠を超えた部分のみが相続財産に加算されます。受取人が相続人以外の場合は非課税枠が使えません。なお法定相続人の数は、相続放棄した人がいても放棄がなかったとした場合の人数を使います。(国税庁No.4114 2026-05-27確認)
株式の相続税評価額はどう計算しますか?
結論:上場株式は「相続開始日の終値」「相続開始月の終値平均」「前月の終値平均」「前々月の終値平均」の4つのうち最も低い金額で評価します。投資信託は相続開始日の基準価額で評価します。非上場株式は純資産価額方式または類似業種比準方式で評価しますが、計算が複雑なため税理士への相談をおすすめします。
債務(借金)は相続財産から引けますか?
結論:被相続人の借入金・未払い税金・医療費などの債務は、相続財産から差し引くことができます(債務控除)。また葬儀費用も一定額まで差し引けます。本ツールの「その他の財産」欄には債務控除後の純資産額を入力してください。債務の方が財産を上回る場合は相続放棄も選択肢です。
倍率方式とはどういう評価方法ですか?
結論:路線価が設定されていない地域(農村部・郊外等)では「固定資産税評価額 × 評価倍率」で土地を評価します(倍率方式)。評価倍率は国税庁の「評価倍率表」で確認できます。本ツールで倍率方式の土地を計算する場合は、路線価欄に0を入力し、「その他資産」に固定資産税評価額×倍率の金額を入力してください。
配偶者の税額軽減(配偶者控除)とは何ですか?
結論:配偶者が相続した財産には「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い方まで相続税がかかりません。この特例を適用するには相続税の申告が必要です。なお二次相続(配偶者が亡くなった後の相続)ではこの控除が使えないため、一次・二次合算で検討することをおすすめします。(国税庁No.4158 2026-05-27確認)
相続税の申告期限はいつですか?
結論:相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。例えば1月15日に亡くなった場合、申告期限は11月15日です。期限を超えると延滞税・加算税が課される場合があります。評価が複雑な場合は早めに税理士へ相談することをおすすめします。
財産評価基本通達とは何ですか?タワマン改正は?
結論:国税庁が定める相続税・贈与税の財産評価の基準です。財産の種類ごとに評価方法が規定されています。2024年1月以降、時価と通達評価額の乖離が大きかったタワーマンションについて評価方法が見直されました。マンション購入による節税の効果は改正前より小さくなっています。
非上場株式はどう評価しますか?
結論:非上場株式は「純資産価額方式」または「類似業種比準方式」、あるいはその折衷方式で評価します。会社の規模・業種・資産構成によって適用方式が異なり、計算が複雑です。相続が発生した場合は必ず税理士に評価を依頼してください。
関連ツール
本ツールは概算値の計算を目的とした一般情報ツールです。税理士監修はありません。不動産の路線価補正・小規模宅地の特例・配偶者の税額軽減・非上場株式の評価など、実際の相続税評価は個別事情により大きく異なります。本ツールの計算結果は税務上の根拠にはなりません。相続税の申告・評価については必ず税理士にご相談ください。