退職後の住民税はどうなる?一括徴収・納付書・減免を状況別に解説
- 住民税は前年の所得への後払い。退職しても納税義務は残る
- 1月〜4月の退職は、残額が最後の給与から一括徴収される
- 6月〜12月の退職は、原則として納付書(普通徴収)に切り替わる
- 払えないときは滞納する前に減免・徴収猶予を相談する
- 国保にある非自発的失業者の軽減は、住民税には存在しない
- 退職した年の所得が減った効果が出るのは翌年度から
最終更新: 2026年8月31日(総務省・横浜市の公表資料を確認)
このページでは退職した月ごとに何が起きるかを整理し、払えないときの相談先までをまとめます。
1. 退職しても住民税が消えない理由
退職して収入が途絶えたのに数か月後に納付書が届く。最後の給与明細を見たら住民税が普段の何倍も引かれていた。 どちらも制度どおりの動きで、原因は同じ「住民税が前年の所得に対して後から課される税だから」です。
住民税(市区町村民税・都道府県民税)は、前年1月1日から12月31日までの所得をもとに税額を計算し、 その年の1月1日に住んでいた市区町村が課税します。所得税が「その年の所得にその年に課される」のに対し、住民税は1年遅れて請求が来ます。
給与所得者の住民税は、6月から翌年5月までの12回に分けて毎月の給与から天引きされます(特別徴収)。 つまり、いま給与から引かれている住民税は「去年働いた分」の請求です。 退職して今年の収入がゼロになっても、去年の所得に対する納税義務は残っているため、支払いは続きます。
| 時期 | 何が起きるか |
|---|---|
| 前年1月〜12月 | この期間の所得が、翌年度の住民税の計算対象になる |
| 翌年5月〜6月 | 税額が確定し、勤務先または本人あてに通知される |
| 翌年6月〜翌々年5月 | この12か月で納める(給与天引きなら12回、納付書なら年4回が原則) |
2. 退職した月で「残りの住民税の払い方」が変わる
退職すると給与から天引きできなくなるため、まだ納め終わっていない分(未徴収税額)の扱いを決める必要があります。 扱いは退職した日が属する月で変わります。
| 退職日 | 未徴収分の扱い | 本人の申し出 |
|---|---|---|
| 1月1日〜4月30日 | 一括徴収(最後の給与・退職手当からまとめて差し引かれる) | 不要(会社の義務) |
| 5月中 | その年度の最終月なので、通常どおり最後の給与から引かれて完了 | 不要 |
| 6月1日〜12月31日 | 普通徴収(本人あての納付書)に切替。申し出れば一括徴収も可 | 一括徴収を選ぶ場合のみ必要 |
出典は横浜市「個人住民税の特別徴収に関するよくあるご質問」の記載 (退職日が6〜12月の場合は「普通徴収」もしくは「一括徴収(本人申出)」に切替、退職日が1〜4月の場合は「一括徴収」に切替・本人の申出不要)です。 この扱いは地方税法に基づくもので、市区町村を問わず共通です。
1月〜4月に辞めると最後の給与が大きく減る
特別徴収は6月から翌年5月までの12回払いです。したがって1月に退職すると1月分から5月分までの5か月分が、 3月退職なら3月分から5月分までの3か月分が、最後の給与や退職手当からまとめて差し引かれます。 年税額が24万円(月2万円)の人が1月に辞めれば、最後の給与から10万円が引かれる計算です。
給与や退職手当が未徴収税額に足りない場合は、不足分が普通徴収に回り、あとから納付書が届きます。
6月〜12月に辞めた場合の3つの選択肢
- 普通徴収に切り替える(既定)— 市区町村から納付書が届き、自分で納める
- 一括徴収を申し出る — 最後の給与・退職手当から残額をまとめて引いてもらう。あとから請求が来ないので管理が楽
- 転職先で特別徴収を継続する — 転職先が決まっていて、前職・転職先の双方で異動届の手続きが取れる場合
普通徴収の納期限が過ぎた分は、あとから特別徴収へ切り替えることができません。 再就職までに間が空く場合は、届いた納付書を必ず期限内に処理してください。
3. 普通徴収の納付書はいつ届き、いつまでに払うのか
普通徴収に切り替わると、市区町村から納税通知書と納付書が郵送されます。 納期は6月・8月・10月・翌年1月の年4回とする自治体が多く、一括で納めることもできます。 年度の途中で普通徴収に切り替わった場合は、残っている期の分だけが請求されます。
納付書が届くのは、勤務先が市区町村へ異動届出書を提出したあとです。 退職からしばらく経ってから届くことがあるのはこのためで、忘れた頃に請求が来て驚くケースが起こります。 退職時点で「未徴収税額がいくら残っているか」を勤務先に確認しておくと、金額の見当がつきます。
4. 失業して払えないときは「減免」と「徴収猶予」を先に相談する
失業・廃業・病気・災害などで納税が困難になった場合、市区町村には減免や徴収猶予(分割納付を含む)の制度があります。 根拠は地方税法で、具体的な要件・減免率・申請期限は各自治体の条例で定められており自治体ごとに異なります。 「前年所得がいくら以下」「離職理由が会社都合であること」といった条件が付くのが一般的です。
重要なのは納期限を過ぎる前に相談することです。減免の申請期限を納期限までとしている自治体が多く、 滞納後は延滞金が加算されます。まずはお住まいの市区町村の税務担当窓口に、離職票など離職を証明できる書類を持って相談してください。
国民健康保険料には、倒産・解雇などで離職した方(非自発的失業者)の前年給与所得を100分の30とみなして保険料を軽減する制度があります。 しかし住民税にはこの軽減制度はありません。国保のほうは 国民健康保険料 計算ツール(全国) で軽減後の保険料を確認できます。
5. 退職した翌年・翌々年の住民税はどう動くか
退職した年の所得(=働いていた期間の給与+退職金以外の所得)が減れば、その翌年度の住民税は下がります。 効果が出るのは1年後です。年度をまたいだ動きを整理すると次のようになります。
| 年 | その年の所得 | その所得にかかる住民税を納める時期 |
|---|---|---|
| 退職の前年 | フルタイム1年分 | 退職した年の6月〜翌年5月(=退職直後に請求される分) |
| 退職した年 | 働いた月数分だけ。無職期間はゼロ | 翌年6月〜翌々年5月(ここで大きく下がる) |
| 退職の翌年(無職なら) | ゼロ | 翌々年は非課税になる可能性がある |
なお、失業手当(雇用保険の基本手当)は非課税で、住民税の計算に含まれません。 受け取った金額がいくらであっても、翌年度の住民税を押し上げることはありません。 失業手当の受給額そのものは 失業手当(失業保険)計算ツール で試算できます。
6. 退職金にかかる住民税は別枠で完結している
退職手当に対する住民税は、給与など他の所得と分離して課税され、退職金の支払い時に会社が差し引いて市区町村へ納入します。 税率は所得割のみで、市町村民税6%・道府県民税4%の合計10%。均等割はかかりません。 つまり退職金の分が翌年の納付書に上乗せされることはありません。
退職金にかかる住民税と所得税を合わせて手元にいくら残るかは 退職金の手取りはいくら? で勤続年数別に確認できます。 住民税だけを個別に計算したい場合は 退職金 住民税 計算ツール を使ってください。
7. よくある質問
退職したのに住民税の納付書が届くのはなぜですか?
住民税は前年1月〜12月の所得に対して翌年課税される「後払い」の税だからです。退職して現在の収入がゼロでも、前年に所得があれば納税義務は残ります。 会社を辞めると給与から天引きする方法(特別徴収)が使えなくなるため、残りの税額が本人あての納付書(普通徴収)に切り替わって届きます。
1月から4月に退職すると最後の給与から住民税がまとめて引かれるのはなぜですか?
1月1日から4月30日までの退職は、本人の申し出がなくても残りの住民税を最後の給与・退職手当から一括徴収することが会社に義務づけられているためです。 住民税の特別徴収は6月から翌年5月までの12回払いなので、1〜4月に辞めると最大5か月分(1月退職なら1〜5月分)がまとめて差し引かれます。
6月から12月に退職した場合、残りの住民税はどう払いますか?
原則は普通徴収に切り替わり、市区町村から届く納付書で自分で納めます。本人が会社に申し出れば、最後の給与や退職手当から残額をまとめて一括徴収してもらうこともできます。 転職先が決まっていて手続きが取れる場合は、転職先での特別徴収を継続することも可能です。
失業中で住民税が払えないときはどうすればいいですか?
滞納する前に、お住まいの市区町村の税務担当窓口へ「減免」と「徴収猶予」を相談してください。 失業・廃業・病気などで納税が困難な場合の減免や分割納付の制度は地方税法に基づいて各自治体の条例で定められており、要件・申請期限は自治体ごとに異なります。 納期限を過ぎると延滞金が加算されるため、期限前の相談が有利です。
再就職したら住民税を給与天引きに戻せますか?
戻せます。勤務先を通じて市区町村へ「特別徴収への切替依頼書」を提出すると、普通徴収で残っている分を給与天引きに切り替えられます。 ただし、すでに納期限が過ぎた分は特別徴収へ切り替えられないため、自分で納付する必要があります。
退職金にかかる住民税は普段の住民税と別に計算されますか?
別枠です。退職手当に対する住民税は他の所得と分離して課税され、退職金の支払い時に会社が差し引いて納入します(分離課税)。 翌年の納付書に上乗せされることはありません。税率は所得割のみで市町村民税6%・道府県民税4%の合計10%、均等割はかかりません。
参考にした一次ソース
- 総務省「個人住民税」(課税の仕組み・特別徴収/普通徴収の区分)
- 横浜市「個人住民税の特別徴収に関するよくあるご質問」(退職月別の一括徴収・普通徴収の切替、切替依頼書の取扱い)
- 横浜市「課税の特例」(退職所得に対する住民税の分離課税)
- e-Gov 法令検索「地方税法」(特別徴収・普通徴収・減免の根拠法)
関連ツール
- 住民税 計算ツール(シミュレーション) — 年収から住民税額を計算する
- 住民税決定通知書の見方 — 届いた通知書のどこを見れば金額の理由が分かるか
- 失業手当(失業保険)計算ツール — 離職後に受け取れる金額
- 国民健康保険料 計算ツール(全国) — 退職後の健康保険3択の比較つき
- 退職金の手取りはいくら? — 額面から税金を引いた残り
- 転職 年収シミュレーター — 転職して働き続ける場合の手取り変化
本ページは総務省・横浜市・e-Gov 法令検索の公表内容に基づく一般的な解説です。 減免・徴収猶予の要件、納期の月、均等割の額などは市区町村の条例によって異なります。 実際の税額・手続き・期限は、お住まいの市区町村の税務担当窓口で必ずご確認ください。



