産休・育休中の住民税|社会保険料は免除でも住民税だけ請求が来る理由
- 産休・育休中は健康保険料と厚生年金保険料が免除される
- 免除期間も年金額の計算では納付した期間として扱われる
- 一方で住民税は免除されない。前年の所得への後払いだから
- 育児休業等給付・出産手当金は非課税。翌年度の住民税は下がる
- 給与が出ない期間は一括徴収・普通徴収・会社立替のいずれか
- 復帰2年目に住民税と保育料が同時に上がる。ここが家計の谷
最終更新: 2026年8月31日(日本年金機構・総務省・e-Gov 法令検索を確認)
育休に入って給与が止まったのに、住民税の納付書だけが届いた。あるいは復職したら住民税をまとめて引かれた。 「社会保険料は免除と聞いたのに、なぜ住民税は来るのか」という疑問は、2つの制度がまったく別の仕組みで動いていることから生まれます。 このページでは免除される範囲・されない範囲を切り分け、休業から復帰までの数年間で住民税がどう動くかを整理します。
1. 免除されるもの・されないものの切り分け
| 項目 | 産休・育休中の扱い | 根拠・注意点 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 免除(本人負担・事業主負担とも) | 事業主が日本年金機構へ申出書を提出することで免除 |
| 厚生年金保険料 | 免除(本人負担・事業主負担とも) | 免除期間も年金額の計算では保険料を納めた期間として扱われる |
| 雇用保険料 | 賃金の支払いがなければ発生しない | 雇用保険料は支払われた賃金に料率をかけて計算するため |
| 所得税 | 給与がゼロならかからない | その年の所得に対して課税されるため、休業中は自然にゼロになる |
| 住民税 | 免除されない | 前年の所得に対する後払い。休業していても納税義務は残る |
社会保険料は「その月に被保険者であることに対して負担する」性質の保険料なので、休業している月を免除にできます。 これに対して住民税は「去年の所得に対する税」であり、今年の就労状況とは切り離されています。 この違いが、給与ゼロなのに納付書が届くという状況を生みます。
2. 免除される期間の範囲(日本年金機構の定義)
| 休業の種類 | 免除される期間 |
|---|---|
| 産前産後休業 | 出産の日(出産の日が出産予定日後であるときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産の日後56日までの間で、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間 |
| 育児休業等 | 育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等の期間 |
どちらも事業主が日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ申出書を提出することで免除されます。 本人が手続きするものではないため、休業に入る前に勤務先が申出をしてくれるかを確認しておくと確実です。 産休の開始日そのものは 産休スタート日計算ツール で計算できます。
3. 育児休業等給付・出産手当金は非課税
休業中に受け取るお金は課税されません。雇用保険法は公課の禁止を定めており(第12条)、その規定は 育児休業等給付にも準用されています(第61条の6第5項)。したがって次の給付は所得税・住民税の対象外です。
- 育児休業給付金
- 出生時育児休業給付金(産後パパ育休)
- 出生後休業支援給付金
- 育児時短就業給付金
健康保険から支給される出産手当金・出産育児一時金も課税対象になりません。 これらはいずれも住民税を計算するもとになる合計所得金額に含まれないため、 休業した年の所得は「働いた月の給与だけ」になります。給付を多く受け取っても翌年の住民税は上がりません。
受け取れる金額そのものは 育児休業給付金 計算ツール、 出産手当金 計算ツール で試算できます。
4. 給与が出ない期間、住民税をどう納めるか
会社員の住民税は毎月の給与から天引きされる(特別徴収)のが原則ですが、給与が出ない月は引きようがありません。 実務では次の3通りのいずれかで処理されます。
| 方法 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 一括徴収 | 休業に入る前の給与や賞与から、残りの住民税をまとめて差し引く | 休業前に賞与がある/あとから納付書を管理したくない |
| 普通徴収へ切替 | 本人あてに納付書が届き、自分で納める(年4回または一括) | 休業が年度をまたぐ/手取りをできるだけ残したい |
| 会社が立替 | 勤務先が毎月納付し、復職後の給与から精算する | 会社にこの制度がある場合。復職後の手取りが一時的に減る |
会社立替の場合、復職後の給与から立替分と当年度分が同時に引かれ、手取りが想定より大きく減ることがあります。 どの方法になるのかを休業に入る前に総務・人事へ確認しておくと、復帰後の家計を組み立てやすくなります。
5. 休業から復帰までの住民税の動き
1年目の途中から休業し、翌年をまるまる休業、その次の年に復職するモデルで整理すると次のようになります。
| 年 | その年の給与所得 | その年に納める住民税(前年所得ベース) |
|---|---|---|
| 休業に入った年 | 働いた月の分だけ(給付金は非課税なので含まない) | 高いまま。前年はフルタイムだったため |
| 休業まるまるの年 | ゼロ | 下がる。前年が働いた月の分だけだったため |
| 復職した年 | 復職後の給与 | ほぼゼロ。前年の所得がゼロなら非課税になることもある |
| 復職2年目 | フルタイム1年分 | 元の水準に戻る(復職した年の所得が反映される) |
家計が一番苦しいのは休業に入った年です。収入は給付金だけになるのに、住民税はフルタイム時代の水準で請求されます。 逆に復職した年は住民税がほぼゼロで手取りが多く見えるため、翌年の反動に備えておく必要があります。
6. 復帰後は保育料も同じ時差で動く
認可保育所の保育料は、世帯の市区町村民税の所得割額で決まります。これも前年の所得がもとになるため、住民税とまったく同じ時差で動きます。 復職した年は休業中の低い所得割額で保育料が決まり、復職2年目に住民税と保育料が同時に上がるのが典型的なパターンです。
保育料がいつの所得で決まるか(4月〜8月分と9月〜翌3月分で参照する年度が変わる点を含む)と、共働き世帯の合算ルールは 共働き 保育料 計算ツール と 保育料計算機 で解説しています。復帰前に試算しておくと、2年目の増額を織り込めます。
7. 休業中に払えないときは滞納する前に相談する
休業で収入が大きく下がり、住民税の納付が難しい場合は、市区町村に減免や徴収猶予(分割納付を含む)の制度があります。 要件・減免率・申請期限は各自治体の条例で定められており自治体ごとに異なります。 納期限を過ぎると延滞金が加算されるため、期限前に税務担当窓口へ相談してください。
8. よくある質問
育休中は社会保険料が免除されるのに、住民税が免除されないのはなぜですか?
社会保険料は「その月の被保険者としての負担」なので休業中は免除できますが、住民税は前年1月〜12月の所得に対する後払いの税だからです。 休業に入る前の年に所得があった以上、その分の納税義務は休業しても消えません。地方税法にも産休・育休を理由とする一律の免除規定はありません。
産休・育休中に免除される社会保険料の範囲を教えてください。
健康保険料と厚生年金保険料が、本人負担分・事業主負担分の両方とも免除されます。 対象は産前産後休業期間(出産日以前42日・多胎妊娠は98日から、出産日後56日までのうち労務に従事しなかった期間)と、 育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等期間です。 事業主が日本年金機構へ申出書を提出することで免除されます。免除期間も将来の年金額の計算では保険料を納めた期間として扱われます。
育児休業給付金や出産手当金は住民税の対象になりますか?
なりません。雇用保険法は公課の禁止を定めており(第12条)、その規定は育児休業等給付にも準用されています(第61条の6第5項)。 したがって育児休業給付金・出生時育児休業給付金・出生後休業支援給付金は非課税です。 健康保険から支給される出産手当金・出産育児一時金も課税対象になりません。 これらは翌年度の住民税を計算するもとになる合計所得金額に含まれません。
給与が出ていない育休中、住民税はどうやって納めますか?
勤務先と相談して3つのいずれかを選びます。(1)休業前の給与や賞与から残額を一括徴収してもらう、 (2)本人あての納付書(普通徴収)に切り替えて自分で納める、(3)勤務先が立て替えて納付し、復職後の給与から精算する。 会社ごとに運用が違うため、休業に入る前に総務・人事へ確認しておくと復帰後の負担が読めます。
育休の効果で住民税が下がるのはいつからですか?
休業に入った年の翌年6月からです。住民税は前年の所得に対する後払いなので、休業で給与が減った年の住民税が反映されるのは翌年度になります。 年の途中から休業に入った場合は、休業した年は満額に近い住民税を払い、その翌年に大きく下がるという動き方をします。 1年以上休業して給与がゼロの年があれば、その翌年度は非課税になることもあります。
復帰した年は住民税と保育料がどう動きますか?
どちらも「前年(休業していた年)の所得」で決まるため、復帰直後は低く抑えられます。 住民税は復帰した年の6月から低い額になり、認可保育所の保育料も休業中の低い市区町村民税所得割額をもとに決まります。 ただしどちらも翌年以降にフルタイム勤務の所得が反映されて上がるため、復帰2年目に住民税と保育料が同時に上がる点に注意してください。
参考にした一次ソース
- 日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」(免除の対象期間・申出の主体・年金額の扱い)
- 日本年金機構「保険料の免除等(産休・育休関係)」(産休・育休それぞれの手続き一覧)
- e-Gov 法令検索「雇用保険法」(第12条 公課の禁止/第61条の6第5項 育児休業等給付への準用)
- 総務省「個人住民税」(前年所得課税・特別徴収/普通徴収)
関連ツール
- 住民税 計算ツール(シミュレーション) — 前年の年収から税額を計算する
- 育児休業給付金 計算ツール — 休業中に受け取れる金額
- 出産手当金 計算ツール — 産休中に受け取れる金額
- 産休スタート日計算ツール — 産休開始日を確定する
- 共働き 保育料 計算ツール — 復帰後の保育料
- 住民税決定通知書の見方 — 届いた通知書の読み方
休業中の住民税の徴収方法は勤務先の運用によって異なります。減免・徴収猶予の要件は市区町村の条例によって異なります。 本ページは日本年金機構・総務省・e-Gov 法令検索の公表内容に基づく一般的な解説であり、個別の判断ではありません。 実際の手続きは勤務先の総務・人事、およびお住まいの市区町村の税務担当窓口へご確認ください。



