産休・育休中の住民税|社会保険料は免除でも住民税だけ請求が来る理由
- 会社の健康保険・厚生年金に入っている人は、事業主が申し出れば、産休・育休中の健康保険料と厚生年金保険料が月単位で免除される
- 免除期間も年金額の計算では納付した期間として扱われる
- 一方で住民税は免除されない。前年の所得への後払いだから
- 育児休業等給付・出産手当金は非課税。課税される給与・賞与が減った年があれば、その翌年度の住民税は下がることがある
- 給与天引きができない月の分は、普通徴収への切替・一括徴収などで納める。使える方法は勤務先と市区町村で違う
- 住民税は6月、0〜2歳児クラスの保育料は9月(横浜市など)に切り替わる。同時には動かない
最終更新: 2026年10月15日(日本年金機構・国税庁・総務省・横浜市・e-Gov 法令検索を確認)
育休に入って給与が止まったのに、住民税の納付書だけが届いた。あるいは復職したら住民税をまとめて引かれた。 「社会保険料は免除と聞いたのに、なぜ住民税は来るのか」という疑問は、2つの制度がまったく別の仕組みで動いていることから生まれます。 このページでは免除される範囲・されない範囲を切り分け、休業から復帰までの数年間で住民税がどう動くかを整理します。
1. 免除されるもの・されないものの切り分け
下の表は、会社の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)と厚生年金に加入している会社員の場合です。 国民健康保険・国民年金に加入している人は別の制度なので、お住まいの市区町村で確認してください。
| 項目 | 産休・育休中の扱い | 根拠・注意点 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 免除(本人負担・事業主負担とも) | 事業主が年金事務所へ申出書を出したときに、月単位で免除(期間の数え方は次の表) |
| 厚生年金保険料 | 免除(本人負担・事業主負担とも) | 免除期間も年金額の計算では保険料を納めた期間として扱われる |
| 雇用保険料 | 賃金の支払いがなければ発生しない | 雇用保険料は支払われた賃金に料率をかけて計算するため |
| 所得税 | その年に支払われた給与・賞与があればかかる | 非課税の給付は含めず、その年1年間の課税される給与・賞与などを合計して年税額を計算する(年末調整・確定申告で精算)。休業中だけを切り出してゼロになるわけではない |
| 住民税 | 免除されない | 前年の所得に対する後払い。休業していても納税義務は残る |
会社の健康保険・厚生年金の保険料には、産前産後休業・育児休業等の期間を免除する決まりがあります。 これに対して住民税は「去年の所得に対する税」であり、今年の就労状況とは切り離されています。 この違いが、給与ゼロなのに納付書が届くという状況を生みます。
2. 免除される期間の範囲(日本年金機構の定義)
| 休業の種類 | 対象になる休業 | 保険料が免除される月 |
|---|---|---|
| 産前産後休業 | 出産の日(出産の日が出産予定日後であるときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産の日後56日までの間で、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間 | 休業を始めた月から、休業が終わる日の翌日が属する月の前月まで(終わる日が月末ならその月まで) |
| 育児休業等 | 育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等の期間 |
毎月の保険料: 休業を始めた月から、休業が終わる日の翌日が属する月の前月まで。同じ月に始まって終わる場合も、その月に14日以上休めば免除 賞与の保険料: 賞与を受けた月の末日を含む連続1か月を超える育児休業等の場合に限り免除 (14日以上・1か月超の決まりは令和4年10月1日以降に始めた育児休業等) |
たとえば育休を10月10日から10月20日まで(11日間)取った場合、月末を含まず14日にも届かないので、10月の保険料は免除になりません。 10月1日から10月14日まで(14日間)なら、同じ月の中の14日以上の決まりで10月分が免除になります。
どちらも事業主が日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ申出書を提出することで免除されます。 本人が手続きするものではないため、休業に入る前に勤務先が申出をしてくれるかを確認しておくと確実です。 産休の開始日そのものは 産休スタート日計算ツール で計算できます。
3. 育児休業等給付・出産手当金は非課税
休業中に受け取るお金は課税されません。雇用保険法は公課の禁止を定めており(第12条)、その規定は 育児休業等給付にも準用されています(第61条の6第5項)。したがって次の給付は所得税・住民税の対象外です。
- 育児休業給付金
- 出生時育児休業給付金(産後パパ育休)
- 出生後休業支援給付金
- 育児時短就業給付金
健康保険から支給される出産手当金・出産育児一時金も課税対象になりません。 これらはいずれも住民税を計算するもとになる合計所得金額に含まれないため、 休業した年の給与所得は、その年に支払われた給与・賞与(休業前に働いた分や、休業中に支給された賞与を含む)だけから計算します。 給付を多く受け取っても翌年度の住民税は上がりません。
受け取れる金額そのものは 育児休業給付金 計算ツール、 出産手当金 計算ツール で試算できます。
4. 給与が出ない期間、住民税をどう納めるか
会社員の住民税は、6月から翌年5月まで毎月の給与から天引きされる(特別徴収)のが原則ですが、給与が出ない月は引きようがありません。 その月の分の納め方には、たとえば次のような対応例があります。どれが使えるか、精算をどうするかは勤務先と市区町村によって違います。
| 対応例 | 内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| 普通徴収へ切替 | 本人あてに納付書が届き、自分で納める | 勤務先が市区町村へ届け出るか。納期と回数は納付書で確認 |
| 一括徴収 | 休業に入る前の給与や賞与から、残りの住民税をまとめて差し引く | 勤務先がこの扱いをしているか。休業前の手取りが減る |
| 勤務先が立替 | 勤務先が毎月の分を納め、あとで本人と精算する | 勤務先にこの扱いがあるか。精算の時期と方法(振込か、復職後の給与からか)は取り決めによる |
勤務先が立て替えた分を復職後にまとめて精算すると、その月の負担が想定より大きくなることがあります。 どの方法になるのかを休業に入る前に総務・人事へ確認しておくと、復帰後の家計を組み立てやすくなります。
5. 休業から復帰までの住民税の動き
1年目の途中から休業し、翌年をまるまる休業、その次の年に復職するモデルで整理すると次のようになります。 給与天引きの住民税は、6月から翌年5月までが前年1月〜12月の所得の分です。その年の1〜5月に引かれるのは、前の年度の分の残りです。
| 年 | その年の課税される給与 | その年の6月〜翌年5月に納める住民税(前年所得ベース) |
|---|---|---|
| 休業に入った年 | 休業前に支払われた給与・賞与(給付金は非課税なので含まない) | 高いまま。前年はフルタイムだったため |
| 休業まるまるの年 | 給与・賞与の支払いがなければゼロ | 下がることが多い。前年(休業に入った年)の課税される給与が減った分だけ。社会保険料控除も減るので、給与の減り方ほどは下がらない |
| 復職した年 | 復職後の給与・賞与 | 1〜5月は前の年度の分の残り。6月からは前年の所得で決まり、前年に課税される所得がなければ所得割がかからない(非課税になることもある) |
| 復職2年目 | 1年分の給与・賞与 | 復職した年の給与・賞与・勤務した期間・控除に応じて上がる。休業前と同じ額に戻るとは限らない |
家計が苦しくなりやすいのは休業に入った年です。収入は給付金が中心になるのに、6月からの住民税はフルタイム時代の所得で計算されています。 逆に復職した年の6月からは住民税が低くなりやすく、翌年6月に上がるので、その分を見込んでおくと慌てません。
6. 保育料は住民税と切り替わる月が違う
認可保育所などの0〜2歳児クラスの保育料は、世帯の市区町村民税の所得割額で決まりますが、切り替わる月は住民税と違います。 横浜市の場合、市民税額の決定にあわせて毎年9月に保育料を更新し、父母(給付認定保護者とその配偶者)の市民税所得割額を合算して決めます。 そのため4〜8月分はその前の年度の税額のままで、9月から新しい年度の税額で決まった保育料になります。 3〜5歳児クラスは国の無償化の対象で保育料はかかりません(給食費などの実費は別)。 自治体によって独自の無償化・軽減もあるので、お住まいの市区町村の案内で確認してください。
保育料がいつの所得で決まるかと、共働き世帯の合算ルールは 共働き 保育料 計算ツール と 保育料計算機 で解説しています。復帰前に試算しておくと、9月の切り替えを織り込めます。
7. 休業中に払えないときは滞納する前に相談する
休業で収入が大きく下がり、住民税の納付が難しい場合は、市区町村に減免や徴収猶予(分割納付を含む)の制度があります。 要件・減免率・申請期限は各自治体の条例で定められており自治体ごとに異なります。 納期限を過ぎると延滞金が加算されるため、期限前に税務担当窓口へ相談してください。
8. よくある質問
育休中は社会保険料が免除されるのに、住民税が免除されないのはなぜですか?
会社の健康保険・厚生年金の保険料は、産前産後休業・育児休業等の期間について、事業主の申出で免除する仕組みがあります(日本年金機構)。住民税は前年1月〜12月の所得に対する後払いの税で、休業に入る前の年に所得があれば、その分の納税義務は休業しても残ります。地方税法に産休・育休を理由とする一律の免除の規定はありません。
産休・育休中に免除される社会保険料の範囲を教えてください。
会社の健康保険・厚生年金に加入している人の、健康保険料と厚生年金保険料が、本人負担分・事業主負担分とも免除されます。事業主が年金事務所へ申出書を出すことが条件です。産前産後休業は、出産の日(出産の日が出産予定日より後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から出産の日後56日までのうち、働かなかった期間が対象です。毎月の保険料は月単位で、休業を始めた月から、休業が終わる日の翌日が属する月の前月まで免除されます。育児休業等は、同じ月に始まって終わる場合でも、その月に14日以上休めば免除されます。賞与の保険料は、賞与を受けた月の末日を含む連続1か月を超える育児休業等の場合に限り免除です(令和4年10月1日以降に始めた育児休業等)。免除期間も将来の年金額の計算では保険料を納めた期間として扱われます。国民健康保険・国民年金は別の制度です。
育児休業給付金や出産手当金は住民税の対象になりますか?
なりません。雇用保険法は公課の禁止を定めており(第12条)、その規定は育児休業等給付にも準用されています(第61条の6第5項)。したがって育児休業給付金・出生時育児休業給付金・出生後休業支援給付金は非課税です。健康保険から支給される出産手当金・出産育児一時金も課税対象になりません。これらは翌年度の住民税を計算するもとになる合計所得金額に含まれません。
給与が出ていない育休中、住民税はどうやって納めますか?
給与からの天引き(特別徴収)ができない月の分は、本人あての納付書で納める普通徴収への切替、休業前の給与や賞与からの一括徴収、勤務先が毎月の分を立て替える、といった対応例があります。どの方法が使えるか、立て替えた分をいつどう精算するかは、勤務先と市区町村によって違います。休業に入る前に総務・人事に確認し、必要なら市区町村の税務担当にも相談してください。
育休の効果で住民税が下がるのはいつからですか?
早くても、休業に入った年の翌年6月からです。給与天引きの住民税は、6月から翌年5月までの12回で前年1月〜12月の所得の分を納めるため、休業で課税される給与・賞与が減った年の分は、翌年6月からの住民税に出ます。ただし社会保険料控除も一緒に減るので、給与が減ったほどには下がりません。休業前の給与や賞与、ほかの所得があれば、休業していた年でも住民税はかかります。
復帰した年は住民税と保育料がどう動きますか?
切り替わる月が違います。給与天引きの住民税は毎年6月に新しい年度の額になり、復帰した年の6月からは前年(休業していた年)の所得で決まった額になります。認可保育所などの0〜2歳児クラスの保育料は、横浜市の場合、毎年9月に、父母の市民税所得割額を合算した額をもとに更新されます(4〜8月分はその前の年度の税額のまま)。3〜5歳児クラスの保育料は国の無償化の対象です。自治体によっては独自の無償化や軽減があるため、お住まいの市区町村の案内で確認してください。
参考にした一次ソース
- 日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」(免除の対象期間・申出の主体・年金額の扱い)
- 日本年金機構「産前産後休業を取得したときの手続き」(産休の免除は開始月から終了日の翌日の属する月の前月まで)
- 日本年金機構 よくある質問(育児休業等期間中の保険料免除)(同月内14日以上・賞与は連続1か月超)
- 日本年金機構「保険料の免除等(産休・育休関係)」(産休・育休それぞれの手続き一覧)
- e-Gov 法令検索「雇用保険法」(第12条 公課の禁止/第61条の6第5項 育児休業等給付への準用)
- 国税庁 No.1400「給与所得」(給与所得には賞与も含む)
- 総務省「個人住民税」(前年所得課税・特別徴収/普通徴収)
- 横浜市「個人の市民税・県民税の特別徴収」(月割額を6月から翌年5月まで徴収)
- 横浜市「保育所等の利用料(保育料)の算定」(毎年9月に更新・保護者と配偶者の市民税所得割額を合算)
関連ツール
- 住民税 計算ツール(シミュレーション) — 前年の年収から税額を計算する
- 育児休業給付金 計算ツール — 休業中に受け取れる金額
- 出産手当金 計算ツール — 産休中に受け取れる金額
- 産休スタート日計算ツール — 産休開始日を確定する
- 共働き 保育料 計算ツール — 復帰後の保育料
- 住民税決定通知書の見方 — 届いた通知書の読み方
休業中の住民税の納め方は勤務先の運用と市区町村によって異なります。減免・徴収猶予の要件は市区町村の条例によって異なります。 保育料の更新月・算定方法は自治体ごとに異なり、本ページの例は横浜市の案内です。 本ページは日本年金機構・国税庁・総務省・横浜市・e-Gov 法令検索の公表内容に基づく一般的な解説であり、個別の判断ではありません。 実際の手続きは勤務先の総務・人事、およびお住まいの市区町村の税務担当窓口へご確認ください。